国会質疑 Interpellation

2023年6月19日 参議院 政府開発援助等及び沖縄・北方問題に関する特別委員会

質問内容

・岡田沖縄担当大臣の「法の支配」の認識について

・OSAについて

・BRICS首脳会議にマクロン大統領が参加を求めたことについて

議事録

第211回国会 参議院 政府開発援助等及び沖縄・北方問題に関する特別委員会 第5号 令和5年6月19日

○高良鉄美君 沖縄の風の高良鉄美です。
 今国会で質疑が行われる最後の委員会になると思いますので、この今国会の最後の質問者として、岡田大臣、林大臣にお聞きしたいと思います。
 私は、三十五年間、憲法や行政法を教えてきました。憲法を学生に正しく理解してもらうということが私の役割だったと思っています。
 四年前に国会に来て驚いたのは、この憲法尊重擁護義務を負っている国会議員の中に、憲法をきちんと理解していない、あるいはないがしろにしている方がいらっしゃるということでした。ですから、委員会で質問する全ての大臣に、憲法が原則としている、統治原則としている法の支配についてお尋ねをしてきました。
 まず、岡田大臣の法の支配に対する御認識を伺いたいと思います。
○国務大臣(岡田直樹君) お答えを申し上げます。
 憲法学者でいらっしゃいます高良委員に御答弁申し上げるのは甚だ僣越とは存じますけれども、法の支配とは、一般に、人権の保障と恣意的な権力の抑制とを趣旨として、全ての権力に対する法の優越を認める考え方であると認識をいたしております。
 その上で、これまで政府としては、法の支配の内容として重要なものは、憲法の最高法規性の観念、また権力によって侵されない個人の人権、また法の内容や手続の公正を要求する適正手続、デュープロセス、また権力の恣意的行使をコントロールする裁判所の役割に対する尊重などである旨を御答弁申し上げてきていると承知をいたしておりまして、私もその認識に立っております。
○高良鉄美君 法の支配というのは、今言われたとおりだと思います。それを、やはり法の支配を守るということを徹底してやるということを日本政府は宣言しているわけですよね。そこをきちんとやるというのが重要ですよね。だから、憲法の尊重擁護義務というのは先ほどお話ししましたけれども、憲法が最高法規であるということをまず認識しておかないといかぬということですね。その上に、人権保障というのがやっぱり対応としてあると、その人権保障をするために国家権力は恣意的な使用、権力行使をしちゃいけないということがあるわけですね。
 そういった面でいいますと、政府は、この法の支配が貫徹された社会を目指すと表明されていましたけれども、沖縄県ではこの法の支配の対峙概念である人の支配が今もまかり通っています。また、政府は、誰一人取り残さない社会の実現を大きな目標として掲げられてこられましたが、沖縄は取り残されたままであります。
 本日は、沖縄県が作成した冊子の抜粋を資料としてお配りしていますので、御覧いただければと思います。
 今週金曜日、六月二十三日、これは慰霊の日になっています。沖縄県民の四人に一人が命を落とした壮絶な沖縄戦は、正式には、嘉手納町、嘉手納基地の中の調印式がありまして、日本軍、米軍、調印式で終わった、これが、九月七日というのが正式な終わった日ですけれども、組織的戦闘が終わった日、これが六月二十三日とされています。慰霊の日は、犠牲者の霊を慰め、世界の恒久平和を願う県民にとっては非常に大切な日であります。激戦地だった本島南部では今も遺骨収集が行われています。一昨日の「報道特集」で取り上げられましたので、御覧になった方もいらっしゃると思います。
 沖縄県民は、辺野古新基地建設反対の民意を、県民投票を始め、参議院選挙、県知事選挙で繰り返し明確に示してきました。しかし、政府は、民意だけでなく犠牲者の遺骨まで踏みにじろうとしています。遺骨を含む土砂を埋立工事に使わないよう求める意見書は、全国の二百を超える地方議会から政府や国会に出されています。政府は、力による一方的な現状変更の試みは許さないと言いながら、沖縄では力による一方的な現状変更を強行しています。岡田大臣から答弁がありました法の支配の内容である適正手続は、沖縄では適正に行われていません。
 外交防衛委員会でも述べましたけれども、復帰前、適正手続は、密約や銃剣とブルドーザーといった言葉に象徴されるように、県民の意思に反する核の持込み、あるいは土地の強制接収が行われました。法の支配の内容の憲法の最高法規性というのもないがしろにされ、憲法より上位に扱われてきたのが日米安保と地位協定です。
 資料一の地位協定の国際比較、失礼しました、資料三ですね、三ページの方です。地位協定の国際比較を御覧ください。これを見ても、政府が基地の集中する沖縄を軽視していると言わざるを得ません。
 五十年前の当時の琉球政府が作成したいわゆる屋良建議書には基地のない平和な沖縄としての復帰を願った県民の心情が記されていますが、基地はなくなるどころか、国会で強行された安保三文書の改定、防衛力強化により、基地が強化された危険な沖縄と化しつつあります。基地は沖縄経済の最大の阻害要因と言われてきましたが、コロナ禍からようやく観光産業が立ち直りをしつつある今このときに更なる阻害になると思われます。
 私の質問主意書への答弁で、二〇二二年中に警察が検挙した在日米軍人軍属等による刑法犯の検挙件数百六件のうち、半数を超える五十四件が沖縄県で発生したことが明らかになりました。基地が集中すれば事件、事故が多いことは当然であり、地位協定の抜本的な改定なくして再発防止策も綱紀粛正も効果は期待できません。
 資料一を見ていただくと分かるように、戻りまして、日本の国土面積の僅か〇・六%の沖縄に米軍施設、専用施設面積の七〇・三%が集中していること、そして資料四では、一人当たりの県民所得は最下位で、全国平均の七五・八%しかありません。物価高騰は、輸送コストが掛かる沖縄では更に高騰に拍車を掛けています。
 岡田大臣が答弁された法の支配の内容は、沖縄では一つも機能していません。適正手続を踏まずに強行されている辺野古新基地建設は、銃剣とブルドーザーから、補助金とブルドーザーに形を変えた人の支配であると繰り返し強調し、次の質問に入ります。
 OSAについて林大臣に伺います。
 OSAは、日本にとって望ましい安全保障環境の創出を目的とし、初年度は、フィリピン、マレーシア、バングラデシュ、フィジーの四か国を対象に調査をされると承知しております。
 配付した資料六は、五月二十日付けエコノミスト英語版から図表を抜粋したものです。GDPでBRICSがG7を抜いたというものです。経済成長率はG7よりもBRICSの方が高いので、今後は差が開く一方だと思います。配付した新聞記事にも指摘があります。ちなみに、マレーシアとフィジーは昨年六月のBRICS拡大会議の参加国でした。また、バングラデシュもBRICSの参加を希望する国として報道されました。
 林大臣に伺います。
 大局観として、G7が世界を経済的に主導する時代は終わろうとし、BRICSもグローバルサウスも経済力を付けてきています。概念として、理念としてきちんとしたODAを徹底するべきであって、この違う概念のOSAで日本にとって望ましい安全保障環境の創出というのは無理があると思いますが、林大臣の御認識を伺います。
○国務大臣(林芳正君) 我が国は、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に置かれております。そのような中で、力による一方的な現状変更を抑止して、特にこのインド太平洋地域における平和と安定を確保して、我が国にとって望ましい安全保障環境を創出するためには、我が国自身の防衛力の抜本的強化に加えまして、同志国の安全保障上の能力、抑止力を向上させることが不可欠でございます。
 こうした観点から、軍等に対する資機材供与、またインフラ整備等を通じて、同志国の安全保障上の能力、そして抑止力の強化に貢献することによりまして、我が国との安全保障協力関係の強化、そして我が国にとって望ましい安全保障環境の創出及び国際的な平和と安全の維持強化に寄与するということを目的とする新たな無償による資金協力の枠組みであるOSA、これを導入したものでございます。
 我が国としては、同盟国、同志国を始めとする国際社会のパートナーと協力をしながら、また、OSAを含む様々な国際協力のツールを戦略的に活用しながら、我が国にとって望ましい安全保障環境の創出に取り組んでいく考えでございます。
○高良鉄美君 先ほどからずっと、違う概念である、あるいは別のものであるという言い方ですけれども、先ほども紙委員からも質問がありましたけれども、このOSAですね、やはり非常に大きな問題だと思います。これ、新たにつくるという形になっていますので、この辺はきちんと議論しないといけないなと思います。
 そして、同志国、同盟国の話が出ましたけれども、南アフリカのヨハネスブルクで八月二十二日から二十四日までBRICS首脳会議が開催されます。フランスのマクロン大統領が参加する機会を与えるよう求めたという記事が幾つもあります。
 日本政府として確認しておられるのか、林大臣にお伺いします。
○国務大臣(林芳正君) 今委員からの御指摘のあった報道は承知をしております。まさにこうした様々な国際情勢をめぐる各国の動向につきましては、必要な情報収集を平素から行っておりまして、八月にヨハネスブルグで開催予定の今お話のありましたBRICSの会合についても、引き続きしっかりと関心を持って注視をしてまいりたいと考えております。
○高良鉄美君 先ほどの質問は、フランスのマクロン大統領が参加をしたいと言っていらっしゃるわけですね。だから、こういう形でいくと日本はどうなるのかなという、ちょっと心配もあるんですが。
 ワシントン・ポスト紙のこういう記事があります。米国はもはや世界中が自分の味方であると思い込むことはできないという論説記事に非常に興味深い内容がありましたので、ちょっと紹介したいと思います。米国はルールに基づく国際秩序と言っているが、米国は、他国にはそのルールを適用するが、自国は軍事介入や一方的な制裁でルールを破っている、思い上がりと偽善の国と見られている、これワシントン・ポストにあるわけです。新興国は今まで我慢していたが、力を付けてきた新興国を中心に一斉に我慢しなくなってきたとあります。
 我慢を強いられている沖縄から見れば、日本政府も米国と同じように見えます。アメリカとさえうまくやっていけばいいと思っている時代ではないということを申し上げたいと思います。
 そして、先ほどからありましたPFASの問題も、そして、沖縄の中でのいろんな沖縄戦の遺骨の問題も、それから、環境の問題全般にわたって、これ日本の主権の問題だと思います。
 私がアメリカに留学をしているときに、環境法がちょうど変わりました。環境基本法を作るということでした。そのとき、アメリカ驚いたのは、もう一遍に米軍基地が規制されるだろうと心配したんですよ。それぐらい心配したにもかかわらず、日本は何もしなかった、この環境基本法で。
 そして、これは是非、この資料の三を見ていただきたいと思います。これ、各国の主権の問題ですよ。基地の中に入る、そこの国の法律が適用されるということで、きちんと、そういった意味では、半主権ではなくしっかりとした主権国家であるというふうなことをしっかり示していただきたいと思います。
 以上で質問を終わりたいと思います。ありがとうございます。