2023年6月8日 参議院 財政金融委員会、外交防衛委員会連合審査会
質問内容
法案審議 我が国の防衛力の抜本的な強化等に必要な財源の確保に関する特別措置法案
議事録
第211回国会 参議院 財政金融委員会、外交防衛委員会連合審査会 第3号 令和5年6月8日
○高良鉄美君 沖縄の風の高良鉄美です。
私は、防衛費の増額やそれを賄う増税には反対です。それより先に防衛費の使い方の合理化を徹底して行うべきです。その姿勢が政府に見えないという視点から、本日も質問をいたします。
資料、お配りしています。
資料一の①は、これまで連合審査会と外交防衛委員会で配付した国産のC2輸送機関係の資料です。一機当たり機体単価が同じ二百二十億円台であるアメリカ製のC17が七十五トン積めるのに対し、C2は三十六トンと半分以下しか積めません。しかも、燃料満載だとC2は十六トンしか積めないということが先週の私の質問で、その答弁の中で明らかになりました。
三枚目になりますけども、資料二の左のページの一六式機動戦闘車は、二〇一九年度以前の調達分にはクーラーがありません。そうなってしまった理由の一つが、このC2輸送機への搭載のために重量を絞ったことだそうです。装甲車両にクーラーがなくて、真夏はどうするつもりなのでしょうか。
そして、先週の答弁を聞いて、資料二のその右のページ、一九式自走りゅう弾砲、これも同じくC2輸送機に搭載するために無理に重量を絞り、低性能になったと推測します。
一九式自走りゅう弾砲について、軍事ジャーナリストの清谷信一さんは、いろいろな媒体で幾つも指摘をしています。重量に関係しそうな内容を御紹介します。前方の、写真を見ながらですね、前方のキャビンの定員は三名。キャビンの装甲化は一部にとどまる。キャビンに入れない装填要員二人は中央部座席に座る。屋根とシートベルトは付いているが、座席クッションはない。当然装甲化もされていない。こんな構造の自走りゅう弾砲をほかに世界で見たことがない。この構造から、敵の攻撃に脆弱。また、核、生物、化学兵器などの環境には対応できないと思われる。試作時には装備されていた十二・七ミリ機銃も量産型には装備されていない。キャビンには乗員用クーラーが装備されているが、中央座席の装填手はその恩恵にあずかれない。
資料一の一に戻れば、この一機当たりライフサイクルコストは、米国製のC17の三百四十三億円に対し、国産のC2は八百九十九億円と二・五倍以上です。高コスト低性能のC2輸送機を開発、導入し、その活用にこだわったため、性能に問題がある車両を幾つも導入することになってしまったわけです。
資料一の②は、以前、外交防衛委員会で配付したものです。上の方の四角囲いの米印のところですけども、防衛省の要望を忠実に踏まえた開発を行った結果、世界市場で売れる装備品はほとんどないとの財務省の指摘はそのとおりだと思います。
繰り返しますが、私はそもそも防衛力の強化や装備品輸出に反対する立場です。しかし、政府・与党の皆さんが言う防衛力の抜本的強化を仮に行うとしても、予算増、増税を行う前に防衛省の改革をきちんと行うべきではないでしょうか。装備品輸出に関連し、与党協議が行われています。不合理な装備品調達の数々を御存じであれば、装備品輸出などを議論する前に防衛省の改革を議論していたはずです。
資料三の百七十、百七十一ページでも、元自衛艦隊司令官の香田洋二さんが、国産を追求した結果、高い買物をすれば、国民に必要以上の負担を掛ける、その典型例がC2輸送機だ、アメリカ製のC17輸送機を調達すればよかっただけの話ではないかと指摘されています。
与党の皆さんは、防衛省の事務方と、情報の多くを防衛省の事務方に依存する記者クラブメディアからの情報をもっと疑って、ほかの情報を探られてはいかがでしょう。現実とは違った前提の下に、あさっての方向を向いて議論しているように見えます。基本的な政治的立場の違いを一度置き、我が国の政策形成の在り方に危機感を覚えます。
長くなりましたが、前回までの総括をいたしました。本日の議論に入ります。
資料三を御覧ください。香田さんは、防衛費増を歓迎しながらも、政府・与党に辛口の議論を幾つも提起されています。その中で、まず費用対効果の相対比較結果を取り上げます。
資料三の五十九ページ、後ろから五行目辺りから読み上げます。F15の作戦効率を一とすれば、イージス艦は一・二になる。これに加えて維持経費などを考えると、F15の全経費を一とした場合にイージス艦を〇・七で済むというような、事の性格上公表ができない性能に関わる秘密情報には触れない形でイージス艦導入の正当性を、主として費用対効果の相対比較結果で示すことにしたと。とても興味深い手法です。
財務大臣にお尋ねします。
今日、財務省は防衛省から装備品の調達について費用対効果の相対比較結果を数値化した形で説明を受けたでしょうか。
○国務大臣(鈴木俊一君) 防衛装備品に関する防衛省からの説明につきましては、装備品によりまして様々でございますが、費用対効果の観点から申し上げますと、具体的な事態を想定し、我が国を防衛する上でより効果が高い装備品や、より効率的な取得方法はないかといった観点から、所管である防衛省から聴取していると承知をいたしております。
具体的には、例えば、新たな防衛力整備計画における重点分野の一つであるスタンドオフミサイルについて、具体的な運用構想を踏まえた上で、まず効果の観点からは、国産開発や海外製品の飛翔距離、速度等の性能、次に費用の観点からは、取得までの期間、取得経費等を防衛省から確認し、総合的に調整した上で、必要な事業に係る予算を計上しております。
また、単なる評価にとどまらず、護衛艦に搭載する垂直発射装置を取得するに当たり、まとめ買いをすることで取得コストを削減するといった調整も行っていると聞いているところでございます。
○高良鉄美君 この比較対照を、それぞれの費用対効果というよりも、この数値化している問題ですね、そこをちょっとお伺いしたかったんですけれども、国民あるいは国会にこのような形の数値化があればオープンにしていただきたい。なければ、これは請求していただきたいなと思います。
資料四は、今年一月二十三日に防衛省が公開した新たな重要装備品等の選定結果についてという資料の一部です。いろいろな装備品等が載っておりますが、極超音速誘導弾のページと〇三式中距離地対空誘導弾能力向上型のページを配付しました。
そのページの三、検討結果には、国内による研究開発の候補のみが所要の要件を満たすことが確認できたとあります。どういう要件を設定したのかも書かれておらず、全く説明になっていません。防衛省は、海外の優れた兵器を買わなくて済むよう、国内産業に仕事を回すため、わざと不自然な要求性能を設定していると指摘する方がいることは御存じの委員もいらっしゃると思います。
資料四程度の説明ではそう疑われても反論できないと思います。資料四の極超音速誘導弾のように、ライフサイクルコストも算定せずに選定するものさえ多々あります。防衛省は、そもそも費用対効果の検証すら内部でしていないと考えるのが自然です。実際、資料三の六十ページで、香田さんは防衛省について、説明していないのでなく、相対評価も併用した作業を行っていない結果として説明できないということではないのかと指摘されています。
防衛省に伺います。
装備品調達に関する国会や国民に対する防衛省の説明ぶりから、香田さんが指摘されるとおり、内部でも相対比較結果を数値化しての評価は行っていないのだと思います。かつてこれを行っていた時代の資料は省内に残っていないのでしょうか。資料が残っているかどうかだけ答えてください。
○国務大臣(浜田靖一君) 委員御指摘の費用対効果の相対比較結果を数値化しての評価やそれに関する資料が何を指すのか必ずしも定かではありませんが、例えば、航空機の機種選定について申し上げれば、自衛隊の運用構想やそれに基づく要求性能等を踏まえた要求性能書や、評価基準を定め、機能、性能や経費、後方支援といった観点から費用対効果も含めて公正かつ厳正に分析、評価しており、その時点において可能な限りの情報収集を行った上で選定作業を行っているところであります。
○高良鉄美君 比較対照しながら、あるものを一として一・二とか一・五とか、そういうような形のものを私はお聞きしたかったんですけれども、いろいろな形であるということなので、是非ともそういう形はまた公表なりなんなり出していただければいいと思います。
資料三の百六十六ページ以下では、香田さんは〇三式中距離地対空誘導弾を挙げて国産装備品に固執することについて批判されています。百六十七ページ、①、どこに迎撃テストの目標となる極超音速ミサイルがあるのか。③、敵がどのような妨害電波を発するのか、日本には十分なデータがそろっていないは、説得力があります。さらに、④、日本が発射試験を行うとしても、これまでのほかの装備の開発実績から推察すれば、その発射回数は恐らく一桁止まりだろうと。アメリカの場合は百発近くを撃った上で導入され、部隊に配備される。それも、電子妨害等の最も困難な実戦を模擬した戦術環境下での迎撃を含む試験発射である。ここに厳然たる性能の違いを生む要因があるは、もっと説得力があります。
防衛省にお尋ねします。
防衛省は、資料四にあるように、〇三式改良型の開発を進めています。発射試験の数、質とも米国製に遠く及ばないため、米国製迎撃ミサイルとは厳然たる性能の違いが生じるという指摘にどう答えられるのでしょうか。
○国務大臣(浜田靖一君) これまで我が国において開発した誘導弾については、発射試験を始めとした所要の試験を実施し、必要な性能を実現していることを確認してきたところであります。
今般の〇三式中距離地対空誘導弾改善型能力向上型の開発については、巡航ミサイル、航空機等への対処が可能な〇三式中距離地対空誘導弾改善型をベースとして、極超音速滑空兵器、弾道ミサイル等の多様な経空脅威に対し対処する能力を付与するものであり、今後、設計、試作、試験を通じて必要な性能を満たす見通しであります。
いずれにしても、極超音速滑空兵器や弾道ミサイル等の多様化、複雑化する経空脅威の対処に可能とするため、〇三式中距離地対空誘導弾改善型能力向上型の開発を着実に進めてまいります。
○高良鉄美君 私は、外交防衛委員会で、アメリカはG7が世界を主導する、アメリカあるいはG7が世界を主導する時代は終わりつつあるという情勢分析を日本の政府や大手マスコミは流さない、しかし、ほんの少し海外情報を探れば情報は幾らでも得られると繰り返し紹介してきました。
資料五は、以前配付した資料の一つで、「エコノミスト」の英語版に載っていたグラフです。購買力平価GDPという名目GDPよりも実質的な比較ができると言われる指標で、BRICS五か国の合計がG7を既に上回り、今後差が開く一方であるということが分かります。
BRICSへの加盟を求める国は約二十もあるといいます。こういった世界の大きな流れからも、私は、岸田政権の進めるアメリカを中心とするG7などとの連携を強める安全保障政策には反対する立場です。仮に防衛費の増額などを行うとしても、それより先に行うべき防衛費の使い方の合理化について、政府・与党が努力しているようには見えません。
私は、前回、財務省資料を用いて過去の例を挙げた上、装備品の開発費などの高騰により、防衛費の増額も増税も現在政府が予定している金額では収まらなくなるとコメントしました。香田さんの先ほどの資料も見ていただいて、このような形で世界の大きな流れに逆らうものであると、なども相まって、岸田軍拡路線は亡国の道だと申し上げ、質問を終わります。
ありがとうございます。