国会質疑 Interpellation

2023年6月6日 参議院 外交防衛委員会

質問内容

・2022年の米軍刑法犯の半数以上が沖縄県であったことについて

・今回の戦略3文書の作成におけるシミュレーションについて

・日朝関係の改善に向けた外務大臣の決意について

・条約実施に向けた外務大臣の決意について

議事録

第211回国会 参議院 外交防衛委員会 第19号 令和5年6月6日

○高良鉄美君 沖縄の風の高良鉄美です。
 お配りした資料、沖縄タイムスの記事を御覧ください。二〇二二年中に警察が検挙した在日米軍人軍属等による刑法犯の検挙件数百六件のうち、半数を超える五十四件が沖縄県で発生した事件でした。
 まず、浜田防衛大臣に、過半数が沖縄であったことの受け止めを伺います。
○国務大臣(浜田靖一君) 米軍による事件、事故はあってはならないものであり、防衛省としては、累次の機会を捉え、米側に対し、隊員教育、綱紀粛正や再発防止の徹底を図るよう申し入れてきているところであります。
 日米同盟の維持強化あるいは在日米軍の安定的な駐留には地元の御理解と御協力が大前提であり、沖縄を始めとする地元の方々との信頼関係が損なわれることのないよう、今後とも日米間で協力して事件、事故の防止に取り組んでまいりたいと考えます。
○高良鉄美君 地元の協力というのは、こういう犯罪のときにどうすればいいんでしょうかね。こういう問題もあると思います。
 今お答えになったように、合衆国軍隊構成員による事件、事故は本来起きてはならないものであり、政府としては、米側に対して綱紀粛正等を随時働きかけており、その防止に向けて引き続き米側とともに取り組んでまいりたいと政府の方は答弁されました。
 これまで、事件、事故が起こるたびに政府は再発防止、綱紀粛正と繰り返されてきたわけですけれども、実効性がなく、起きてはならない事件、事故は起き続けています。基地が集中する沖縄の県民は、米軍関係者による事件、事故の危険にさらされているわけです。
 米国側に実効性のある対応を求めるべきだと思いますが、林大臣に御決意をお伺いします。
○国務大臣(林芳正君) 米軍人等による事件、事故、これは地元の皆様に大きな不安を与えるものであり、起きてはならないものであります。
 政府としては、米側に対して、綱紀粛正等、様々な機会に随時働きかけてきております。私自身、今年一月の日米2プラス2、また六月一日ですが、オースティン国防長官いらっしゃったときの会談時など、様々な機会を捉えて米側に対して事件、事故での適切な対応について求めるなど、高いレベルでも米側とやり取りをしておるところでございます。
 今後とも、こうした事件、事故の防止に向けて、より実効的に取り組むべく、米側と協力してまいりたいと思っております。
○高良鉄美君 非常に県民の人権が侵害されているという認識で、やはり今、林大臣おっしゃられたように、米側にきっちりと言うと、言うべきことは言うというのはこれすごく大事なことだし、それから人権感覚、あるいは人権の保障をしっかりする国だということをアピールするためにも、アピールといいますかね、こういうことを訴えるためにもしっかりとその辺は米側と話をしてほしいと思います。
 資料一の方ですね。昨年十月、ヘリテージ財団は、二〇二三年度版米軍事力評価報告書において、米軍に対する総合評価は初めて弱いとしました。この報告書は、二つの大きな紛争に同時に対処する能力を測定したものということです。そもそもアメリカは、二〇一二年のオバマ政権の時代に、二か所の大規模紛争に同時に関与する能力を持つことを断念しています。
 政府は、今回の安保、戦略三文書の作成に際し行ったシミュレーションにおいて、米軍が世界の複数の地域で大規模な戦争状態に入ることを想定したシナリオはあったのでしょうか。仮にそういうシナリオがなかったとすれば、日本の戦略を現実的に考えるのであれば、有事において米軍が頼みにならない事態は高確率であり得ると想定する必要があると思いますが、浜田大臣の御見解を伺います。
○国務大臣(浜田靖一君) 米国シンクタンクの報告書の内容の一つ一つに政府としてコメントすることは差し控えたいと思います。
 その上で、防衛省は、従来より、将来の防衛力の在り方を検討する過程で、自衛隊の能力を評価するためのシミュレーションを行い、防衛力の不足等を検証しています。
 今般の国家安全保障戦略等の策定に際しても、国民の命と暮らしを守り抜くためいかなる防衛力が必要か検証する観点から、最も烈度の高いと想定される我が国への侵攻事態等への対応について、能力評価等を通じた分析を行ったところであります。
 その詳細についてお答えすることは差し控えますが、日米安全保障条約第五条を前提とした上で、我が国に対する侵攻には我が国が主たる責任を持って対処し、米軍はこれを支援するとの日米の基本的役割分担を踏まえて検討を行い、必要となる防衛力の内容を積み上げました。
 政府としては、米国が日米安全保障条約上の義務を果たすことに全幅の信頼を置いています。国民の命と暮らしを守り抜くため、我が国が自らの防衛力を抜本的強化することによって、日米同盟の抑止力、対処力を更に強化させていく考えです。
○高良鉄美君 今日の午前中の財金との連合審査でもありましたけれども、やはり外交もということをどれだけ外にアピールしてあるのか、日本はこういう姿勢ですということが非常に私は大事なことでないかなと思っています。そういう意味では、もう防衛力だけ米国頼みということはとても難しくなってくるんだろうと、今後。そういったときに、じゃ、日本だけずっと伸びていきますかというと、そういうわけにはもういかないだろうと。そこの中にあるのは、やはり近隣諸国との関係をしっかり外交で頑張っていくということが重要じゃないかなと思っています。
 それでは、ちょっと最近のテレビにもありましたけれども、五月三十一日の朝鮮民主主義人民共和国、北朝鮮から衛星が打ち上げられ、墜落したことが韓国合同参謀本部や朝鮮側の報道で明らかにされました。資料で配っております。
 このことは、五月二十九日に朝鮮側から、衛星発射のため、五月三十一日の零時から十一日零時までの間、黄海、東シナ海及びフィリピン東方の太平洋に危険区域の設定が通報されていました。これも資料の方で地図がありますので。そのため、周辺国は冷静に対応したと思います。
 ところが、防衛省は、弾道ミサイル等に対する破壊措置の実施に関する自衛隊行動命令を出し、PAC3部隊による迎撃を準備したと承知しています。このことは今月一日の本委員会で福山議員が取り上げられましたので、実際には配備はされていなかったということは理解しております。衛星への弾道ミサイル等の破壊措置命令の発出に、この国の安全保障を防衛省に任せて大丈夫なのかとさえ思いました。本当は安全だと分かっていたのではないでしょうか。分かっていなかったなら、相当深刻な状況と言わざるを得ません。
 北朝鮮と言えば、衛星であっても破壊措置命令を出して問題ないと思われているのでしょう。私もテレビをちゃんとスマホで撮りました。ずっと、北朝鮮ミサイル、もうそのことがずっと書かれているんですね。メディアも、落下した後も危機をあおる報道をしていました。
 これまでJアラートも、頻発というんですかね、余りにも出し過ぎて、そして、しかも通過した後とか、もう落下した後とか、あるいは非常に遠くのことについてアラートが出ると、こういう状況がありましたけれども、防衛省にお尋ねしても恐らくこれまでの会見や答弁の繰り返しですから、答弁を求めませんけれども。
 外務大臣にお尋ねします。
 岸田総理は、五月二十七日に行われた北朝鮮による拉致問題の国民大集会で、金正恩朝鮮労働党総書記との首脳会談実現に意欲を示し、首脳会談を早期に実現するため、私直轄のハイレベルで協議を行っていきたい、私は、大局観に基づき、地域や国際社会の平和と安定、日朝双方のため、自ら決断すると、より踏み込んで表明されました。
 この発言について朝鮮側は、我々は岸田首相が執権後、機会あるごとに前提条件のない日朝首脳会談を望むという立場を表明してきたことは知ってはいるが、彼がこれを通じて実際に何を得ようとしているのか見当が付かない、二十一世紀に入り二度にわたる朝日首脳会談が行われたが、なぜ両国関係が悪化の一途をたどっているのかを冷静に振り返ってみる必要があるとした上で、日本は言葉ではなく実践行動で問題解決の意思を示さなければならないと述べています。
 先ほど述べた防衛省の対応もそうですが、高等学校の授業料無償化や幼保無償化からの排除、在日朝鮮人へのヘイトスピーチやヘイトクライムへの政府の対応が問われています。外務大臣が人道上重要と述べられた朝鮮被爆者問題もたなざらしです。在日朝鮮人への差別解消が対話の前提条件になっていることは、所信質疑でも述べたとおりです。
 岸田総理が表明された直接対話の実現に向け具体的にどのように取り組まれるのか、林大臣の御決意を伺います。
○国務大臣(林芳正君) 北朝鮮への働きかけに関する具体的な中身については、まさに今後の交渉に影響を及ぼすおそれがあるため、明らかにすることは差し控えさせていただきますが、我が国の北朝鮮への対応に関しては、先月二十七日に開催された国民大集会で、今委員からも少し御紹介がありましたが、総理が述べられたとおりでございます。
 総理はこういうふうに述べられておりまして、日朝平壌宣言に基づいて、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して日朝国交正常化の実現を目指すが、とりわけ、拉致被害者御家族も御高齢となる中で、時間的制約のある拉致問題はひとときもゆるがせにできない人権問題である、引き続き、全ての拉致被害者の一日も早い御帰国を実現すべく、全力で果断に取り組んでいくと、こう述べられております。
 そして、総理は、日朝間の懸案を解決し、両者が共に新しい時代切り開いていくという観点からの総理の決意、これをあらゆる機会を逃さず金正恩委員長に伝え続けるとともに、首脳会談を早期に実現すべく、総理直轄のハイレベルで協議を行っていきたいと考えていると述べられております。
 そして、大局観に基づいて、あらゆる障害を乗り越えて、地域や国際社会の平和と安定、そして日朝双方のために総理自ら決断してまいると、こう述べられたところでございます。
○高良鉄美君 是非、普遍的価値ということで常々法の支配ということを日本政府おっしゃって、この間のG7でもそうでしたけれども、やはり人権問題とかそういった問題については、もう率先して日本がアジアの中でアピールをするんだということぐらい前に出て、是非、朝鮮民主主義人民共和国との間も、もちろん韓国との間、大分良くなっているというお話がありましたけれども、そういったところでアジアの唯一のG7の国だということも、是非前進をさせていただきたいと思います。
 林大臣は、今年一月の外交演説で、国際社会の平和と繁栄を支えてきた自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値や国際秩序が厳しい挑戦にさらされているとした上で、普遍的価値を守り抜く覚悟だと述べられました。
 G7サミットでは、普遍的な価値、共通の価値を実感されたのでしょうか。死刑制度を存置していること、同性婚や別姓婚を認めないこと、難民認定率の低さと申請者の処遇など、人権に関わる我が国の制度は普遍的価値を共有するG7諸国と乖離していると言わざるを得ません。
 例えば、今まさに法務委員会で審議されている入管法改正案は、法の支配にかなっておらず、G7の国々と普遍的価値を共有していません。また、死刑制度を存置しているのも日本だけです。五月三十日、死刑制度、死刑廃止に取り組んできた田鎖弁護士のフランス教育功労勲章授章式で、ブロソー参事官は、二〇〇一年の第一回死刑廃止世界会議で採択された宣言の一部を引いて、一節を引いて、死刑は復讐が正義に勝ることを意味し、全ての人の一義的権利である生きる権利を侵害するものである、死刑が犯罪を抑止したことはない、死刑は拷問であり、残虐で、非道で、卑劣である、死刑を運用する社会は象徴的に暴力を推奨していることになる、人の尊厳を大切にしている社会は死刑を廃止する努力をなさなければならないと紹介されました。これが、G7のみならず、国際社会の普遍的な共通の価値だと思います。
 日本が締結した人権条約についても、条約機関からの勧告が守られているとは言えない状況です。締結に法的拘束力がないことは当然ですが、締約国には条約実施義務があり、憲法九十八条二項には条約遵守義務が規定されています。法的拘束力がないことを殊更に強調、主張することは、誠実に遵守しているとは言えません。
 死刑制度も家族法も入管制度も外務省所管ではありませんが、国際的なこの人権の潮流や国際機関からの勧告など、理解が深まる努力を外務省として行う必要があると思いますが、大臣の御決意を伺います。
○国務大臣(林芳正君) 我が国は、国際人権諸条約の締約国として、条約が定める義務を誠実に履行してきていると、こういうふうに考えておるところでございます。
 また、我が国は、各条約に基づいて定期的に政府報告を提出しておりまして、各条約に基づき設置された委員会が同政府報告を検討するに際しても、政府全体として誠実に対応してきております。また、委員会から公表される総括所見等につきましては、外務省ホームページに掲載をしているところでございます。
 私といたしましても、国際社会において日本の考え方が正しく理解されるように引き続き力を尽くすとともに、日本らしい人権外交を進めてまいりたいと考えております。
○高良鉄美君 やはり、日本らしい今外交とかおっしゃられました。世界の国々が、国際的に日本が信頼される、その中でリードしていきたいというような旨のお話もあったと思います。
 ですから、信頼を得るための行動というものはやはり国際社会の中で得られるものだと思いますので、例えば常任理事国のお話ですね、安保理事会の。これも、やはり日本に対する期待というのは、アメリカ、イギリス、フランスと同じような期待でもないし、ロシア、中国に対する期待でもない。どちらでもない、日本らしい、まさに日本に期待しているのは、どちらとも違うものを期待していると思うんですね。それがやっぱり、平和国家としての日本と、憲法の平和主義をしっかりとしている日本、そして日本国民もそうなんだと。ですから、日本の経済界、特に商社は諸外国に出ていって一生懸命やっているわけですよね。それが結局は、外務省にいろんな情報を与えながら、やっぱりうまくいっていると思います。
 そういう意味では、是非とも外務省頑張っていただいて、国際社会の中で日本らしい外交を展開していただくようお願いを申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございます。