「北朝鮮による衛星打ち上げを目的とする弾頭ミサイル技術を使用した発射に抗議する決議」に反対した理由について
本日、参議院本会議で北朝鮮による衛星打ち上げを目的とする弾頭ミサイル技術を使用した発射に抗議する決議が行われました。私は決議に反対いたしました。反対理由は以下の通りです。
朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)が国連安保理決議に違反して人工衛星を打ち上げたことについては自制を求めるが、決議案には以下の理由で反対する。
◆北朝鮮は日本の海上保安庁に対し、11月22日午前0時から12月1日午前0時の間に衛星ロケットの打ち上げを計画していると予告していた。実際には天候予測(雨)を理由に1時間早まったとされている。
◆北朝鮮の予告はミサイルではなく、人工衛星の打ち上げであったにもかかわらず、政府はJアラート(全国瞬時警報システム)を発出し、NHKをはじめとするマスコミは「ミサイル発射」を連呼し、ミサイルがあたかも沖縄県上空を飛来するかのように避難を呼びかけた。
◆今回の決議は、11月21日の「衛星打ち上げを目的とする弾道ミサイル技術を使用した発射」に抗議するとしているが、発射物の内容が不明確で、どの程度危険性があったか明らかにされていない。
◆今回打ち上げられた衛星の高度は約500㎞で、政府が100㎞前後と定義した領空ではなく、「我が国上空を通過する」とすることは、国民の不安を煽ることになる。深夜にけたたましくJアラートが発出され、沖縄県民に避難が呼びかけられたことにより、沖縄県民とりわけ避難が困難な高齢者から恐怖を感じ眠れなかったなどの意見が多数寄せられている。
◆北朝鮮の脅威を煽ることは、日米軍事同盟の強化を正当化し、つまるところ、基地負担に苦しむ沖縄へ更なる負担を正当化する意図が見て取れるだけでなく、防衛省が先島諸島や那覇市への地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の展開やその継続の口実になる恐れがある。
◆今回も、緊密に連携する対象国を「米国、韓国等」としている。過去の決議にあった「米韓中ロと連携して・・・外交努力を展開すべき」から、ウクライナ情勢によりロシアが省かれただけでなく、中国との連携に言及しなかったことは、日中関係、さらには今後の日朝関係改善にもマイナスの影響を及ぼす懸念がある。
◆北朝鮮との対話の道を閉ざし、政府が最重要課題としている拉致問題の早期解決につながらない。
◆朝鮮学校への授業料無償化除外やヘイトスピーチ等、今回の発射と何ら関係のない在日朝鮮人への差別を煽るだけでなく、関東大震災における朝鮮人虐殺の存在を否定するような言論にもつながっている。岸田政権の支持率が過去最低を記録する中、政府・自民党への国民の批判を、北朝鮮に向けさせようとする世論操作は慎むべきである。
◆参議院ではこれまで16回にわたって同様の決議がなされており、決議は形がい化している。「良識の府」としての参議院は冷静な対応をとるべきである。
以上
2023年11月29日
髙良鉄美